シナリオ 幻蒼海の魔影 前編
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チャプター1
水平線まで続く青い海。照りつける真夏の太陽。流れる白い雲。
ハムト「あー、あっついニャー。勇者ー、夕飯取れたのニャー?
また魚なのニャ……。もう飽きたのニャ……。
ハムトは、またヤシの実を拾ってきたのニャ。
ハムト肉球拳なのニャ。」
ハムトはヤシの実を肉球で割ると、片方をあなたへ渡した。
ハムト「ヤシの実ジュースも飲み飽きたのニャー。
この島に流れ着いて一週間なのニャー。
完全に遭難したのニャ!!どうして誰も助けに来ないのニャ!!」
チャプター2
ハムト「おーい、ルー、アレウス、トト、テラスー!返事をするニャー!!」
ハムトは神官の名前を水平線に叫んだ。
しかし、返事はなかった。
何故なら、ここは魔ノ海域。トトの千里眼。テラスの交信術も届かぬ場所。
ハムト「ニャンでこんな事になったのニャ……。回想するニャ。」
物語は一週間前に遡る。海鳥の声、静かな波音が辺りに響く。あなたは海に浮かぶ船上に居た。
ルー「……。」
ハムト「ニャハハハハ!!よく似合ってるニャー。」
テラス「ルー姉様可愛いよー。」
ルー「……。いつまでこの格好でいないといけないのでしょう。」
トト「ルー姉さん。そのキメ顔のままでいないとダメだ。」
アレウス「トト。これに何の意味があるのだ?」
トト「サービスだよ。夏は水着でサービスが必要なのさ。」
ルー「もう脱ぎます……。」
テラス「あー、似合ってたのに……。みんなは水着にならないの?私も水着が欲しいよ。」
トト「ボクが水着になっても価値はないよ。アレウス兄さんはふんどしかブーメランパンツだ。」
アレウス「え?」
トト「テラスは外見の年齢的に色々ヤバイと思うんだ。」
ハムト「規制とか世知辛いご時世ニャー。」
アレウス「そんな事より。今は魔ノ海域の調査が必要だ。」
ルー「そうです!!遊びに来たんじゃないんですよ。」
ハムト「もう着替えたのかニャ。サービス精神足りないニャ。」
ルー「勇者様。ここは魔ノ海域と呼ばれている場所です。
海の上には人は住めません。よって夢ノ国の海は大変危険な場所になっています。」
アレウス「確かな存在として土地が定着しにくいのだ。魔ノ海域は特にな。」
テラス「トトの千里眼も、テラスの交心術もきかないんだよ。」
ハムト「それは危ないニャ。近付く必要ないニャ。」
トト「それが、この宝の地図の欠片ってのが出回ってね。」
アレウス「伝説の海賊クロヒゲの宝を埋めた場所を記しているらしい。
クロヒゲの財宝のある島は宝島と呼ばれ海賊の間で伝説となっている。」
ハムト「お宝ニャ!!欲しいニャ。お宝ゲットして、ステップ召喚するニャ。」
ルー「クロヒゲの宝を求めて世界中の海賊が集まっているのです。」
テラス「海賊の財宝って、なんかドキドキするよね!!」
トト「そのせいで魔ノ海域がいつもより不安定になっているんだ。」
ハムト「ニャルほどニャー。だから、あの海軍という連中がついて来てるのニャ。」
チャプター3
大海原を進む。巨大な軍船。夢ノ国の海を護る精鋭「海軍」 だ。
アルメイダ「今のところ問題ないようだね。」
ジュアン「航海は順調ですよ。姐さん。」
マルチナ「ですよ。姐さん。」
アルメイダ「私達は海賊じゃないんだ。姐さんはよしな。」
マルチナ「キャプテン姐さん!!」
アルメイダ「姐さんは余計だって言ってるだろう。」
ジュアン「今のところ、海賊の姿は無いようです。」
アルメイダ「海賊って連中はふざけた連中だよ。
自分たちがいるから海が確かな存在になってると主張する輩だからね。」
ジュアン「そのほとんどが犯罪者ですからね。中には新しい島を発見したりする者もいますが。」
マルチナ「マルチナは、いつもその説明がよくわからないのです。
マルチナは、合法的に悪い奴を殴れればいいのです!!」
ジュアン「君は、はっきりしとるなー。」
アルメイダ「私達の使命は勇者と神官を護る事。あとは……?」
マルチナ「クロヒゲの財宝を!!」
ジュアン「手に入れる事!!」
アルメイダ「そうだ。」
ジュアン「いやー、海軍はお金かかりますからね。
財宝を見つけたら運営費に当てていいとトトさんから言われてますから。」
マルチナ「マルチナのおやつのグレードもアップします。」
アルメイダ「気張っていくよ!!」
チャプター4
ハムト「長い回想だったニャ。でも、もうちょっと続くのニャ。
あの時、あいつらが来なければ、こんな事にならなかったのニャ……。」
物語はまた遡って一週間前……。
アレウス「あの船は何だ?」
トト「この距離なら千里眼が使えるよー。太陽のドクロの海賊旗。
あれは陽光の海賊旗アンの船だ。」
ルー「確か、海賊の中でも正義のために戦っていると聞いた事があります。」
テラス「じゃあ、友達になれるかな?」
あなたの船の前に大きな水柱が立った。アンの船からの大砲だ。
アン「あたしの名前はアンだ。この海で知らない者はいないだろう。
私は、魔ノ海域に入りたい。大人しく地図を渡せ!!」
ハムト「いきなり撃ってきたのニャ。危ないニャ。」
アン「今なら入れるんだ。地図を渡せ。」
ルー「何か焦っているようですね。とりあえず落ち着いて話し合いましょう。」
その時、アンの船の前にも大きな水柱が立つ。アルメイダの船の砲撃だ。
アルメイダ「今日こそ逃がしはしないぞ。正義の海賊ぶっても無駄だ。」
ジュアン「年貢の納め時です。」
マルチナ「キャプテン姐さん。ぶちのめしていい?」
アン「しつこい女狐のアルメイダじゃないか。ここで決着つけても良いな。」
テラス「あー、ちょっとちょっとケンカしないでよ。話し合おうよ!!」
アン「あたしは、親父に会わないといけなんだ!!地図を渡せ!!」
飛び交う砲弾。激しい銃声。怒鳴り声が海に響く。
ハムト「ニャんて荒っぽい連中ニャ!!」
ルー「ダメです。魔ノ海域は不安定な場所。そこで負の感情をぶつけ合ったら……。」
突如、巨大な嵐が吹き荒れ、魔獣が出現した。
激しい豪雨と稲光が、あなた達の船を包む。
ルー「勇者様。このままでは危険です。」
ハムト「海の上だとどうにも出来ないニャ。マズイニャ。
勇者逃げるニャって……。周りも海ニャー。
そうニャ。この樽を使うニャ。」
その時、一際大きな波があなたの船の船体を叩いた。
あなたとハムトは海に投げ出された。
チャプター5
ハムト「そして流れ着いたのがこの島ニャ。長かったのニャ。本当に長い回想だったのニャ。
勇者とハムトは、この島で一生を終えるのニャ……。
いや、脱出なのニャ!!勇者。イカダを作るのニャ。
イカダを作ってこの島を脱出なのニャ!!」
その日から、あなたはハムトの指示でイカダの材料を集めだした。
木を切り、蔓をロープ替わりに結わせた。
ハムトはヤシの実を肉球で割り続け、あなたに与えた。
途中何度か魔獣に襲われ、宝の地図を手に入れる事に成功した。
そして、遂にイカダは完成した。
ハムト「これでこの島ともオサラバ出来るニャ。」
あなたの力作のイカダはどう考えても荒波に勝てそうもなかった。
ハムト「行くのニャ。限界なのニャ。食糧をいっぱい積んでいけば大丈夫なのニャ。
途中で魚を釣れば食糧も足りるのニャ。」
一抹どころではない不安を抱えながらも、あなたは出航した。
しかし、あなたの勇者としての勘が、この先に突破口があると告げていたのだ。
もし、実生活で遭難したのなら、大人しく救援を待ったほうが良い。
その点を注意していただきたい。
何故なら、あなたとハムトの前には暗雲が立ち込めていたからである。
チャプター6
あなたは海上で襲い来る魔獣を次々と撃退した。
しかし、魔獣の大半は実体が無い物ばかりで黒い霧に変わるだけだった。
夢ノ国に原生する魔獣を倒しても食糧になる前に海に沈む物が大半だった。
ハムト「このままではダメニャ。飲み水が残り少ないニャ。
これならば島にいたほうが良かったニャ……。
ニャンで島から出てしまったのニャ。
はっ?ハムトのせいなのかニャ。勇者ごめんニャ~。」
チャプター7
それからさらに数日が過ぎ、また一日が終わろうとしていた。
ハムト「ここで勇者の伝説が終わってしまうのニャ……。
遭難で勇者を死なせてしまったら、ニャハムート族の恥ニャ。
ニャハムート族で一生ダメな伝説として語り継がれるニャ……。
こんな事ニャら引きこもっていたほうが良かったニャ。
働いたら負けなのニャー。ニャハニートで良かったのニャ……。」
ハムトは沈む夕陽を眺めながら、遠い目をした。
赤い水平線の向こうに小さな黒い点が見えた。それは段々と大きくなっていった。
ハムト「船ニャ!! 神官達ニャ?いや海軍ニャ?この際海賊でもいいニャ!!」
チャプター8
海賊旗を靡かせて船は沖にイカダのすぐ側で停まった。
ハムト「やっぱ海賊ニャ。いいニャ。勇者、海賊から船を奪うニャ。勇者ならやれるニャ。」
一艘の小舟が船からおろされた。
サッチ「にっちもサッチもいかない状況のようでさあね。」
ハムト「は?ニャ?」
サッチ「にっちもサッチもいかない状況かと?」
ハムト「なんか、お前キモっ。タコなのかニャ?イカなのかニャ?」
サッチ「あっしはイカヒゲのサッチ。」
ハムト「サッチ?ってさっきから駄洒落だったのかニャ?」
サッチ「にっちもサッチも……。」
ハムト「もういいニャ!!」
サッチ「まぁ、とにかくあっしの船にあがってください。悪いようにはしませんぜ。」
チャプター9
あなたがサッチの船に上がると、そこには誰もいなかった。
ハムト「誰もいないのニャ。どうやって動いているのニャ?」
サッチ「こいつは幽霊船ですから。勝手に動くのでさあ。」
ハムト「ニャンだって!!幽霊いるのかニャ?」
サッチ「ハッハッハッハ。この船は宝を求める心で動いているのでさあ。
そちらの御仁は勇者さんでしょう?
夢ノ国は勇者さんが重要な位置にいるてえ話を聞いた事がある。
勇者の危機と夢ノ国の危機。それに呼応して、勇者さんの前に現れたんだと思いまさあ。」
ハムト「ニャんだか知らないがラッキーだった……のかニャ。」
サッチ「あっしにとってもラッキーでさあ。この船には船長がいねえ。
勇者さん。あんたが船長をやってくれれば財宝までいけるかもしれねえ。」
ハムト「ニャ、ニャンだって!!勇者を幽霊船の船長にするのニャ!!」
サッチ「そうでさあ。お願いしやす。じゃないと、この船は永遠に魔ノ海域を彷徨っちまう。」
ハムト「魔ノ海域を脱出するには、この船が必要ニャ。
勇者は船長。今日からキャプテン勇者ニャ。」
チャプター10
あなたを乗せた海賊船は大海原を昼も夜も休むことなく進む。
今は月光に照らされながら静かな海を進んでいた。
波の音だけが辺りに響いた。
ハムト「幽霊船ってのは驚いたけど快適ニャ。」
サッチ「全自動ですからね。
途中の島で飲み水や食糧を調達しやすね。」
ハムト「美味しい料理も出るニャ。サッチが料理してるのニャ?」
サッチ「いえ、コックがいやすよ。他の船員も。」
ハムト「何処ニャ。シェフを呼ぶニャ。」
その時、月光が一際大きく輝くと甲板を照らした。
たくさんの幽霊が所狭しと歩き回り働いていた。
ハムト「ギニャー!!お化けニャ!!」
サッチ「ここは幽霊船ですからね。
ほれ、そこにいるのが船長達の料理を作ってくれているコックですよ。」
一体の骸骨が、あなたのほうに振り向くと、ぺこりとお辞儀をした。
ハムト「ニャニャニャんと。ハムトの知らない世界ニャ~。」
サッチ「他にも骸骨の船乗りもいやすよ。呼びやしょうか?」
ハムト「いいニャ!!ゾゾゾゾーーー!!」
チャプター11
ハムト「そろそろ幽霊の船員にも慣れたのニャ。
慣れると、暑苦しくもないし気の良いやつらニャ。
宝の地図の欠片は集まってきたけど、宝島はまだニャ?」
サッチ「1人だけ宝島に行った事がある奴がいるのでさあ。
そいつを見つければ、もっと楽かもしれやせんね。 」
ハムト「魔ノ海域にいるのニャ?」
サッチ「ええ、まぁ。ここがまだ魔ノ海域になる前に来たんでやすよ。」
ハムト「生きてるのニャ?」
サッチ「さ、どうですかねぇ。監獄島って場所にいると思いやすが……。」
ハムト「囚人なのニャ?」
サッチ「そうでさあ。流石に死んだかもしれやせんね。」
ハムト「キャプテン勇者行ってみるのニャ。」
チャプター12
監獄島。海軍によって作られたA級の犯罪者を集めた収容所である。
魔ノ海域が広がり飲み込まれる寸前に看守も囚人も退去した。
しかし、ごく一部の囚人は隙をみて逃げ出し監獄島に留まった。
そこが地獄に変わるとは知らずに……、地獄を求めて……。
島を覆う巨大な木々の合間に見える塀が監獄だった名残だ。
今は人の気配はない。時折、魔獣の咆哮だけが不気味に響いていた。
ハムト「あそこが監獄島かニャ。人なんかいなそうニャ。」
サッチ「飲み水や食糧の確保は出来そうでやんすね。
どうしやす船長?」
ハムト「ダメ元で言ってみるかニャ。キャプテン勇者。」
チャプター13
上陸したあなたを待っていたのは魔獣と鬱蒼と茂る密林だった。
ハムト「船置きっぱなしで大丈夫ニャ?」
サッチ「あの船は船長の資格のない者の命令では動かないのでさあ。」
ハムト「船長の資格ニャ?ハムトでもなれるニャ?」
サッチ「なれないことはないでさあ。
飽くなき冒険心とお宝を求める欲望があればなれまさあ。
もちろん、宝島に行きたいという強い意思がないとダメでさあ。
その意思があの船を動かしているのでさあ。
あの船の幽霊船員は、皆宝島に未練を残して死んだ者達なのでさあ。」
ハムト「死んでも宝を見つけたいのニャ。すごい執念ニャ。」
サッチ「海賊は浪曼をなくしたらただの犯罪者でさあ。
あの幽霊船の動力は海賊の浪曼って事でさあ。」
ハムト「サッチ格好よい事を言うのニャ。」
チャプター14
あなたの前に木々や苔に覆われた鉄製の巨大な扉が現れた。
サッチ「ここが監獄の入口でさあ。中には魔獣もいやすので気をつけてくだせえ。」
ハムト「流石に死んでるかもしれないニャあ。」
サッチ「運び出せなかった海軍の物資も残っていやす。回収していきやしょう。」
ハムト「どんなのがあるのかニャ?」
サッチ「缶詰とかでさあ。他にも生活必需品とかでやす。」
ハムト「キャプテン勇者とハムト以外にはいらないと思うニャ。」
サッチ「あっしも生きてやすからね。必要なんでさあ。」
ハムト「そう言えばサッチはキモイけど幽霊じゃないのニャ。」
サッチ「キモイって酷いでさあ。
これでもイカヒゲサッチと言えばちょっとは名の知れた海賊だったんでさあ。」
ハムト「全然知らないニャ。」
サッチ「あっしもクロヒゲとは因縁がありやしてね。是非とも財宝が欲しいでやんす。
そのために、あの幽霊船の船員になったのでさあ。」
ハムト「ニャルほどニャあ。海賊の財宝は魅力的ニャ。
ハムトはオーブをいっぱい召喚したいニャあ。」
チャプター15
監獄の中は奇妙な迷宮になっていた。
界蝕が起こりかけ、時空が歪んでいるのだ。
サッチ「こりゃいけねえ。引き返したほうが良さそうでさあ。」
ハムト「その海賊は生きていなさそうニャ。」
サッチ「そいつはクロヒゲの宝の一部をもっていたんですがねぇ。」
その時、通路に鳥の鳴き声が響いた。
ジャック「ん?まさか人なのか?
おーい。助けてくれえ。助けてくれよお。」
ハムト「なんニャ。立派な格好してる癖に情けない奴ニャ。」
サッチ「あいつが、その海賊でさあ。生きてるようでさあ。」
ジャック「俺の名前はジャック。
豪海の伊達漢ジャックとは俺様の事よ。」
チャプター16
ジャック「へー、あんたが勇者って奴か。黒キ者と戦ってるんだっけ?」
ハムト「勇者や黒キ者の事知らないのかニャ?」
ジャック「興味がないんだ。そういうのは。」
サッチ「ジャックの興味は財宝と女だけなんでさあ。」
ジャック「おお、サッチ。お前生きていたのか!!」
ハムト「知り合いなのニャ?」
ジャック「昔俺の船で航海士をしてた事があるんだよな。」
サッチ「そうでやす。」
ハムト「幽霊船のニャ?」
ジャック「幽霊船ってのは何の事だ?」
サッチ「あっしの船です。ジャックの船は壊れちゃったじゃないでやすか。」
ジャック「じゃあ昔のように俺と組んで宝島を目指そうじゃねぇか。」
サッチ「あっしの今のキャプテンは勇者さんでさあ。」
ジャック「なにい?こいつは海の素人なんだろう?やっぱり俺がキャプテンだ。」
ハムト「うちの勇者に文句つけんニャ。おっさん!!」
ジャック「まぁ、確かに腕は大したもんみてぇだな。
わかった。わかった。あんたがキャプテンでいい。
海の男ってのは細かい事は気にしねぇもんだ。」
ハムト「これからキャプテン勇者の言う事を聞くニャ。」
ジャック「わかった。よろしくな。キャプテン。」
ハムト「物分かりの良い奴で良かったニャ。」
サッチ「とにかく、ここを脱出しやしょう。」
チャプター17
ジャック「助かるぜ。ここは囚人だけじゃ出れねえんだよなぁ。
魔ノ海域の拡大で、ここを退去しなきゃなんなくてよ。
界蝕のどさくさに紛れて逃げ出したところまでは良かったのよ。
途中で、ここから出れねえ事に気づいてよ。
すごい物つくりやがったぜ。海軍の奴らは。」
サッチ「神官のアレウスの結界術を張り、トトが設計したらしいんでさあ。」
ハムト「まぁ、あの2人なら、やれそうニャ。」
チャプター18
監獄の扉を抜けると、新鮮な空気と朝日が出迎えてくれた。
遂に、あなた達は監獄の迷宮から脱出する事が出来たのだ。
ジャック「ふー、久しぶりのシャバの空気だぜえ。
いやあ、これもキャプテン勇者のおかげだなぁ。」
ハムト「そうニャ。感謝するニャ。」
サッチ「キャプテン見てくだせえ。沖に船が停泊してまさあ。」
ジャック「どれどれ?ありゃあ女海賊アンの船じゃねえか。」
ハムト「キャプテンは勇者なのニャ!!お前じゃないニャ!!」
ジャック「どうやらあいつも俺を助けに来てくれたようだなぁ。」
ハムト「知り合いなのニャ?」
ジャック「アンは俺の娘なんだよ。アッハッハッハ。」
ハムト「アンの親父って、この男だったんかニャ……。」
チャプター19
ジュアン「姐さん。監獄島が見えてきました。」
アルメイダ「アンは、父親を探すと言っていた。いずれ、ここに姿を現すはず……。」
マルチナ「ジャックとかいう海賊ですよね。生きてたらぶん殴っていいですか?」
アルメイダ「ああ、好きにおし。」
ジュアン「どうやら先に着いているようですね。見知らぬ船も一隻見えます。」
アルメイダ「あの男を、あの監獄から連れ出すのは容易ではないはずだ。
迂回して気付かれないように上陸。島で捕まえるぞ。」
ジュアン「下手すりゃ2隻相手にしないといけないのはきついですからね。」
アルメイダ「陸ならば逃げ場も限られている。
こちらはお前たちもいるからな。」
ジュアン「腕利きはアンとジャックぐらいのものでしょうしね。」
マルチナ「どっちもぶちのめします!!」
チャプター20
続々と監獄島へ集結する海の荒くれ者達。
それぞれの思惑が交差する中、あなたは船に戻るために密林の中を進む。
ハムト「来た道とちょっと違うのニャ?」
サッチ「おそらく界蝕の影響が出てるんでさあ。
魔ノ海域は不安定な場所ですからね。いつ虚無の水面に沈んでもおかしくないのでさあ。
逆に一晩で島ができたり、その島が大きな亀だったりする事もあるのでさあ。」
ハムト「ニャルほどなぁ。ところでジャックが持ってるクロヒゲのお宝って何なのニャ?」
ジャック「ああ、このオウムだよ。」
ハムト「そういえばずっといるニャ。」
ジャックの肩のオウムは一声鳴いた。
ジャック「こいつはクロヒゲが飼っていたオウムでな。
クロヒゲの財宝まで案内してくれると言うが……。
今のところ役に立ってはいない。」
ハムト「なんニャ。それ本物なのニャ?オウムの癖に喋らないしニャ。」
オウムはハムトを見ると「ニート、ニャハニート」と鳴いた。
ハムト「こら、何て事言うのニャ!!」
ジャック「アッハッハッハ。こいつがクロヒゲのオウムなのは間違いない。
宝島の内部で俺はクロヒゲの財宝を見た。
そこに番人のようにいたのが、このオウムよ。」
サッチ「そのオウムは宝島の存在を世に知らしめるためにいるのでさあ。
伝説が本物であると人が信じなければ宝島はなくなってしまうのでさあ。」
ハムト「ニャルほどニャあ。」
ジャック「つまり俺様も選ばれし存在。キャプテン勇者と同じって事さ。」
ハムト「おっさん。勇者は特別なのニャ。一緒にしないでニャ。」
サッチ「まぁ、なのでどっちかと言うとオウムのほうが重要なんでさあ。」
ジャック「おい、サッチ!! 」
ハムト「ニャハハハ!!」
チャプター21
ハムト「どうしてお宝を持ち帰らなかったのニャ?」
ジャック「まぁ、俺様だけで行った訳じゃねえのよ。
俺様の船の船員。他の海賊達も一緒にな。
今ほど魔ノ海域も広くなかったからな。何とか宝島をみつけたのさ。
だけど、いざ宝島についた後は仲間割れよ。」
ハムト「仲間割れニャ?」
ジャック「まぁ、俺達は海賊だからな。全員が何とか相手を出し抜こうってハラだったのさ。
結果、お宝を前にして、大揉めに揉めたってわけだ。
俺は財宝の在り処までは辿りつけたが、1人じゃどうにもならねえ……。
このオウムだけが、もう一度宝島に行ける手がかりって訳さ。」
サッチ「キャプテン勇者。船が見えてきやしたぜ。」
チャプター22
あなたが船に戻ろうとすると、女海賊アンが立ちはだかった。
アン「待ちな。」
ジャック「おお、アンじゃねえか。俺様を助けにきてくれたのか?」
アン「クロヒゲのオウムをよこしな?」
ジャック「アンちゃん。お父さんだよ。感動の再会だよ?」
アン「あたしが用があるのはオウムとあんたの命だけだよ。」
ジャック「え、どういう事だ?」
アン「あんた母さん捨てて、世界中の海をほっつき歩いてたじゃないか。」
ジャック「いやいや、お前の母さんも海賊だったじゃない。」
アン「ああ、そうさ。何かむかつくから落とし前だけつけとこうと思ってさ。」
ハムト「ちょ、ちょっと理由それだけなのニャ!!」
アン「欲しい物はいただく。気に入らない奴はぶちのめす。それが海賊の流儀だ。」
サッチ「そんなもんですぜ。海賊ってのは。」
アンはジャックに剣をつきつける。
ジャック「落ち着け、アン。今、俺様はこちらのキャプテン勇者の部下なんだ。
他所の船の船員を勝手に殺すのはどうなんだろう?……だろう?」
アン「ん? あんたがキャプテン勇者なのかい?」
ハムト「そうニャ。そして相棒のハムトニャ、副船長と言ってもいいニャ。」
アン「ふーん。そうか。じゃあ悪いけど、この男売ってくれないかな?
海賊式にサメの餌にしなくっちゃあ。」
ハムト「怖い事言うのニャ。」
ジャック「キャプテン勇者売ったりしないよねえ?」
アン「金なら言い値で出してもいいぞ。」
ハムト「売ったニャ!!」
サッチ「ハムトさん、あんた海賊向いてまさあ。」
チャプター23
ジャック「おいコラ。まてこのニート猫!!」
ハムト「可哀想だから命だけは取らないで欲しいニャ。」
アン「うーん。母さんの前でぶちのめすだけにするかなぁ。」
ハムト「ささ、どうぞニャ。オウムはハムトと一緒ニャ~。」
アン「おい。オウムも寄越せよ。代金分だろう。」
ハムト「オウムは別料金ニャ。ハムトも宝島行きたいしニャ。」
サッチ「ハムトさん、きっちり海賊してまさあね。」
アン「あたしは宝島の財宝が必要なんだ。
まずは名声。クロヒゲの財宝を見つけたとなれば、海賊界で一躍有名になれる。
そして、金。これがあれば色々な事が出来るからな。夢を叶える資金にする。」
ハムト「夢ニャ?」
アン「ああ。あたしは海賊島を作って海賊女王になるのが夢なんだ。」
アン「海賊女王ニャ!?」
アン「あたしらは海賊は海を開拓している。
あたしらが色々な所を冒険しなければ海は確かな存在にならないはずだ。
そのための拠点。海賊島が必要なんだ。」
ハムト「でも、商船とか襲ってるのニャ?」
アン「悪徳な商船しか襲わない。それに、あたしが興味があるのは未知の財宝だからね。」
ハムト「ハムトも財宝欲しいしニャあ。
どうするキャプテン勇者?サッチもジャックも意見を聞きたいニャ。」
サッチ「まぁ、一時的に手を組んでもいいんじゃないでしょうかね。」
ハムト「ジャックはどうニャ?あれ? ジャック?ジャックは何処行ったのニャ?」
サッチ「いやせんね。」
アン「まさか……。」
ハムト「逃げたのニャ!!」
チャプター24
アン「ちくしょう!!絶対とっ捕まえてやるからね。」
サッチ「オウムも持っていかれちまいましたからね。」
アン「あたしの部下が見つければ捕らえると思うんだが……。」
サッチ「ジャックは、抜け目無いですからねぇ。上手く逃げると思いやすよ。」
ハムト「追っかけたほうがいいニャ。」
アン「勝手に死なれると、財宝も遠くなっちまう。」
サッチ「あっしは何かいやーな予感がしやすけどねぇ。」
チャプター25
ジャック「ここまで逃げれば大丈夫だな。
小舟でも見つけてトンズラするぜ。
クロヒゲのオウムさえ居れば、いずれ宝島へ行けるはずだ。
おっと、そう言ってる間に小舟を発見。
ラッキー。キャプテン勇者に会ってからツいてるぜ。」
アルメイダ「そりゃあ、あたしらの船だからね。」
ジュアン「海軍の旗印が描いてありますよ。」
マルチナ「バカなおっさんですね。」
ジャック「お、お前は。アルメイダ!!」
アルメイダ「ここで会ったのも因縁を感じるねぇ。
2人共やっておしまい!!」
ジュアン「アイアイサー!!」
マルチナ「わーい。殴れるぞー!!」
チャプター26
アン「まったく魔獣が多いねぇ。」
サッチ「ひょっとしたら完全に無人となった監獄島を界蝕が飲み込む前兆かもしれやせん。」
ハムト「そうなるとどうなるニャ?」
サッチ「虚無の水面に沈み、無に還ってしまいやさあ。」
ハムト「ヤバイニャ。早く脱出するニャ!!」
アルメイダ「おっと。待つんだよ。」
アン「アルメイダ!!」
アルメイダ「大人しく投降すりゃあ。痛い目には遭わないよ。」
ジャック「……。」
アン「あんたが案内したのか!!」
ジャック「すまねえ、アン……。だって半殺しにされたんだ……。」
マルチナ「いっぱい殴りましたー。」
ハムト「こいつ最低ニャ。実の娘を売ったのニャ。」
アルメイダ「勇者。あなたもキャプテン勇者と名乗りアンの味方をしたとか?」
ハムト「ニャ? 誰がそんな事言ったのニャ。確かに勇者はキャプテンだけど悪い事をしてないニャ。」
ジャック「……。」
ハムト「おっさん。またお前が口から出まかせかニャ!!」
ジュアン「ジャックを連れ出したのはキャプテン勇者と聞きましたが。
あそこは1人じゃ抜け出せないはずです。」
サッチ「キャプテン勇者は犯罪者じゃないから連れ出せたのでさあ。」
アルメイダ「まぁ、この場は勇者を疑っても仕方がない。
私達について来ていただければ結構です。
あんたはどうする?」
アン「あたしは、もちろん海賊流でいくさ!!」
アルメイダ「ちょいとおしおきが必要なようだね。」
2人の間に重苦しい殺気が渦巻きはじめた……。
チャプター27
その時、島全体が大きく揺れ動いた。
地鳴りと波の音が一際大きく聞こえていた。
ハムト「なんニャ?」
サッチ「界蝕でさあ。こりゃあ逃げないと飲み込まれちまいやす!!」
アルメイダ「船員を回収して退避だ、ジュアン。」
ジュアン「アイアイサー!!」
アルメイダ「マルチナはジャックを連れてきな。」
マルチナ「アイアイサーです。キャプテン姐さん。
あれ? 縄だけになってる……。逃げた!!」
アン「油断も隙もない男だな……。」
アルメイダ「アン。ここは休戦だ。あんたにも部下がいるんだろう。」
アン「ここは素直に恩に着ておくよ。」
アルメイダ「なあに、これも因縁さ。」
アン「キャプテン勇者。あたしは船に戻る。あんたも自分の船に戻りなよ。」
ハムト「そうニャ。島が沈む前に脱出ニャ!!」
サッチ「強力な魔獣も出てきやす。急ぎやしょう。」
チャプター28
あなたは遂に自分の小舟の前に辿り着く事が出来た。
小舟には一体の骸骨の船乗りが乗っていた。
サッチ「ん? なんか変でやすな?」
ハムト「どうしたニャ。早く脱出するニャ。」
幽霊船がゆっくりと島から離れだした。
幽霊船の速度はぐんぐん上がっていく。
ジャック「おおーい。キャプテン勇者ー。
悪いが、これが海賊流だー。その小舟は俺様からの情けだー。」
ハムト「ちょちょちょちょちょ!!ふざけんニャ!!なんて奴なのニャ!! 」
サッチ「こっりゃあにっちもサッチもいかない状況になっちまいましたねぇ。」
ハムト「駄洒落言ってる場合かニャ!!」
サッチ「キャプテン勇者。幽霊船は宝島に行こうとする意思で動いていやす。
今は一時的にジャックが動かしていやすがね。
本当の持ち主じゃあねえので、いずれはキャプテンの元に戻りやすよ。
なんて言っても、あんたはキャプテン勇者ですからねぇ。」
ハムト「そんな事より脱出ニャ!!」
サッチ「おおっといけねぇ。早く逃げやしょう。」
骸骨の船乗りは返事をするようにカタカタと骨を鳴らした。
あなた達は全速力で監獄島を離れた。
吹き荒れる豪雨と防風があなた達を襲う。
監獄島は巨大な界蝕に徐々に飲み込まれていった。
ハムト「間一髪だったのニャ……。」
サッチ「夢ノ国の海は不安定ですからねぇ。
こうならないためにも海に出る者が増えてくれりゃあいいんだが。
人が夢を見なけりゃあ、夢ノ国は成り立たねぇですから。」
ハムト「そんな事より。また遭難ニャ……。あのおっさん、本当にサメの餌にしてやるニャ。」
サッチ「海賊ってえのは元来あんなもんですよ。
アンのように夢や志があるほうが珍しいんでさあ。」
ハムト「海賊の流儀はいいニャ。これからどうするニャ?
アンの船も海軍の船も見当たらないニャ。」
サッチ「まぁ、あの界蝕から逃げ出すだけで精一杯でしたからねぇ。
あっしの友人に助けてもらいやすかねぇ。」
ハムト「友人ニャ?タコとかカニじゃないニャろニャ?」
サッチ「いやいや、そんなんじゃございやせん。
「人魚」でさあ!!」
サッチはにやりと笑うと、静かにクロヒゲの財宝の歌を口ずさみはじめた。
さっきまでの悪天候が嘘のように空が晴れ上がっていた。
太陽は静かに沈みはじめ、青い海をオレンジへと変えていった。
海賊の冒険は終わらない。何処かに財宝がある限り。
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